【読書メモ】「組織進化論 企業のライフサイクルを探る」(著)ハワード・E・オルドリッチ

組織論の大家、ハワード・E・オルドリッチ教授の「組織進化論」を読みましたので、まとめていきます。 ただ本書の難易度は高く、あくまで概要のみとさせていただいております。

 本書の目的は冒頭で述べられており、

■組織について書く

■組織の出現の仕組みについて書く

■進化論という視点に従って、新しい組織、組織個体群、組織コミュニティが出現する過程について書く

の3つとされています。過程というのは、

組織が「変異」し、環境や競争のために、希少資源をめぐるその変異が「選択」され、適合的なものが生き残る「保持」が起こり、そして「生存闘争」が展開する、という形で進みます。

これらの過程についてもう少し詳しくまとめます。

変異

組織が従来から持つ組織ルーチンや伝統からの新たな展開は何でも「変異」と見られます。変異には意図的なものと無計画なものがあります。意図的な変異は、人々や組織が別のやり方をつくり出そうと能動的に取り組み、問題への解決方法を追求するときに起こります。それは、困難な状況や計画された一連の活動、外部コンサルタントからの助言等があったときに、意識的な対応として結果的に生じます。無計画な変異は、環境からの影響や選択の圧力と関係なく起こります。事故、機会、幸運や葛藤、不正行為、創造的探求等のために生起します。

選択

ある種の変異が起きたことを契機に、区別しながらそうした変異を選択したり、選択的にある変異を除去したりするような作用です。選択の基準は市場の力、競争の圧力、内的な組織構造化の論理、制度化された規範への同調や別の力によって設定されます。

保持

選択された変異を保持するための働きです。保持は選択された変異が保存されて複製されるか、そうでなければ再生産される場合に起きます。保持の過程では、集団や組織が有益だと証明されたと思われる既存の組織ルーチンが、組織にとって価値あるものとなります。

闘争

組織内、組織間、そして組織個体群間では、資源の希少性があるために、個人や組織などは有効は変異を探索したり、選択する過程を始めたりします。メンバーが組織内部で個人のインセンティブを追求する場合に希少な資源をめぐる闘争が起きます。

 これら変異、選択、保持、闘争は段階を追うのではなくほぼ同時に、あらゆる社会的単位の内部で起こっています。組織進化論は、こうした過程の原理を用いて組織の特別な形態が特定の環境にどのように存在してきたかを説明するのです。

本書は非常に難解で、決してサクッと読めるような本ではないのですが、間違いなく名著であり、組織論を学ぶからには避けては通れない一冊だと思います。素晴らしい邦訳が出版されていることに感謝をし、しっかりと理解できるように何度も読んでいきたいと思います。