映画「キューブ」に学ぶ組織論
受験勉強の息抜きに「キューブ」という映画を見ました。
殺人トラップが張り巡らされた謎の立方体に閉じ込められた男女6人が協力して脱出を目指していくというストーリーです。
勉強中の「組織論」を使ってこの映画の解説をしていきたいと思います。なお核心に触れるようなネタバレはございません。
さて、まずこの6人は元々知り合いというわけでもなく、何の脈絡なく集められた男女です。しかし彼らは「脱出」という共通の目的を持ちます。加えて彼らは元脱獄囚、警官、医師、エンジニア、数学専攻の学生といった異なるバックグラウンドを有しており、コミュニケーションを図って専門性を活かしながら、脱出に向け協働していきます。
組織学者のBarnardは組織成立のための三要素をこのように述べています。
1.伝達
2.貢献意欲
3.共通目的
(Barnard,1938)
この要件から見ると、間違いなくこの6名は「組織」といえるでしょう。また彼は組織の定義をこのようにしています。
2人以上の人々による、意識的に調整された諸活動、諸力の体系
(Barnard,1938)
混乱する彼らですが、現実を受け入れ、脱出に向けてリーダーシップを発揮するメンバーが出てきます。リーダーシップとは学術的にはこのように定義されています。
集団の成員に受け入れられるような目標を設定し、それらを達成するために個々の人たちの態度や行動を統合的に組み立て、いわゆる組織化を行い、それらをさらに、一定の水準に維持するという集団全体の機能
(Stogdill,1974)
しかし、脱出は簡単ではなく、ときにはメンバーが命を落としていく状況で、諍いが起き始めます。これを学術的にはコンフリクトと呼びます。コンフリクトはこのように定義されています。
人々や集団が意思決定困難になるような、意思決定の標準的メカニズムの故障
(March&Simon,1958)
一般的にコンフリクトを生み出す条件として以下の3つがあげられています。
1.資源の希少性
2.自律性の確保
3.意図関心の分岐
(Pondy,1967)
彼らが閉じ込められているキューブには食糧や水、道具も与えられておらず、慢性的に資源が不足している状況でしたし、命もかかっている状況で平静にいられるはずもありません。やがてお互いが自律性の確保に向けて、コンフリクトが発生していくのでした。
コンフリクトは組織を崩壊へと導く側面を持つ一方で、組織にとって機能的な面もあります。Robbins(1974)によれば、あまりにもハーモニーを重視すると、逆に自己満足に陥って、崩壊にいたることさえもある、とされています。多少のコンフリクトであれば、その低減に向けてメンバーの行動を動機づけることになります。また見解が対立することは、より上質なアイディアを生み出すこともあります。
さて、本作ではコンフリクトがどのような結果に結びついていくのか......。それは是非本編を見ていただければと思います。90分という映画にしては短い時間でしたが、ハラハラ・ドキドキの展開で非常によくできた作品でした。
参考文献: