【読書メモ】「ネットワーク組織」(著)若林直樹

久しぶりの更新となってしまいました。

今日は受験勉強のためにこちらの本を読んだのでまとめていきたいと思います。

東京都立大MBAでは2020年度の前期に「社会ネットワーク論の鍵概念である『強紐帯』『弱紐帯』『構造的空隙』を説明した上で、これらのネットワーク上での特徴が起業や新規事業開発を実施する際に、どのように影響するのか論述しなさい。」という問題が出題されていたからです。ネットワーク組織は近年注目されている分野となりますので、都立大MBA志望者は抑えておいた方が良さそうです。本書は入門書的な一冊です。ネットワーク組織について難しすぎず、簡単すぎず、解説されておりおすすめです。

本書ではネットワーク組織は「複数の個人、集団、組織が、特定の共通目的を果たすために、社会ネットワークを媒介にしながら組織の内部もしくは外部にある境界を越えて水平的かつ柔軟に結合しており、分権的・自律的に意思決定できる組織形態」と定義されています。

その特徴は5つあり、

①フラットで柔軟な結合:社会ネットワークが結合するもので、階層が低く水平的で緩やかな結合形態である。

②組織の壁を越えた協働:特定の目的を果たすために、従来の部門や組織の壁を越えて結合し、協働する組織形態である。

③ネットワークを通じた資源や人材、情報の動員:社会ネットワークを通じて、必要な資源や人材、情報へアクセスできるし、動員を図ることもできる。

④外部環境が判断基準:ネットワーク組織は、部門や組織の壁を越えてネットワークで結合しているので、外部の常識、評価、価値観、判断基準が入ってきやすくなる。そのため外部環境、とりわけ、市場を判断基準にした意思決定と行動を行う。

④自己組織的で柔軟な変化 :ネットワーク組織は緩やかに結合(ルース・カップリング)したものであるので、環境の変化に対して、自ら柔軟に構造変革を行う。

です。そしてネットワーク組織のメリットは、

①学習効果:異質な主体同士で社会ネットワークを機動的に作ることができ、そこで新しい情報や異質な知識を交流させることができれば、双方とも短期的に学習の成果を挙げられる。

②社会での正統性の調達ベンチャー企業のように社会的な認知度の低い企業組織が社会的に確立された評価を得ている企業と提携すると、その企業の評判が高まる。

③不確実性の低減:情報交換を通じた「不確実性の低減」が容易にできて、明確な状況認識と問題対応を行いやすい。

④取引費用削減効果:企業間取引にかかわる規範や評判を流通させているので、取引について情報収集・分析の負担を減らすだけではなく関係を安定化させて取引費用を削減する。

⑤経済活動での主体性:個々人の主体体的なネットワーキングが期待される。

です。逆にデメリットとしては、

①活動の不安定性:複数の主体の緩やかな結合なので、事業活動自体の不安定性、不確実性が高い。

②学習成果の散逸:組織に知識やノウハウが貯まる仕組みが弱いので、長期的に散逸しやすく、独自の競争能力を築くことができない。

③組織の不安定性:組織自体が不安定なので長期的な発展が困難になることがある。

④従属や吸収の危険性:他の組織に依存度を高めるとその組織に従属したり、吸収されてしまう危険性が出てくることがある。

が挙げられます。

ネットワーク組織は、個人、集団、組織という3つの異なる次元の単位がネットワークで結合する組織形態です。組織論では大まかに企業組織の内部のネットワークと、企業組織間のネットワークに分けて議論しています。前者を組織内ネットワーク、後者を組織間ネットワークといいます。

前者には具体的に

①フラットな組織:タテの改装組織が少なく、分権化を進めており、トップと現場が近い組織。

②プロジェクト・ベースの組織:特定の問題解決を図るために、必要な人材と経営資源を集めて、機関を区切って一時的に形成される集団。

マトリックス組織:複数の命令系統を持ち、事業と職能という2つの軸で構成される組織構造。

があります。

後者には、

①企業グループ:法人格を持った企業の集合体。

②系列:日本経済に独特に見られた、特定の中核大手企業が支配的である継続的な企業間の取引関係。

③仮想的企業体:1つのブランドを持ったリーダー企業が、開発・生産・流通などの企業活動のために、複数の外部企業の活動を情報通信ネットワークで統合して、あたかも1つの企業のように活動しているネットワーク組織。

④戦略的提携:組織同士が戦略目標を共有して行う提携関係。

⑤中小企業間ネットワーク:中小企業が戦略提携を行い、構築した組織間ネットワーク。

⑥官民協働:政府・地方自治体と企業やNPOが提携関係を組み、公共サービスの供給。

があります。

以上が、ネットワーク組織 についての概要になります。もちろん社会ネットワーク論の鍵概念である強紐帯、弱紐帯、構造的空隙についても詳しく触れられておりますので、是非目を通してみてはいかがでしょうか。