映画「1917 命をかけた伝令」に学ぶコミュニケーション

映画「1917 命をかけた伝令」を鑑賞しました。

www.youtube.com

監督は「アメリカン・ビューティー」でアカデミー作品賞を受賞したサム・メンデスです。「アメリカン・ビューティー」はアメリカ社会を痛烈に皮肉った人間ドラマでめちゃくちゃ面白いなのですが、今回は戦争映画です。第一次世界大戦西部戦線が舞台ですね。

2人のイギリス兵士が将軍からある伝令を受けるところから物語は始まります。後退しつつあるドイツ軍をデヴォンシャー連隊第2大隊が追撃しようとしているのですが、実はこの後退はドイツ軍の罠でした。この罠にかかってしまうと第2大隊の兵士1,600人が全滅してしまう可能性があるというのです。これを察知したイギリス陸軍司令部は攻撃の中止を決定するのですが、戦火を潜り抜けてこの伝令をせよ、ということなのですね。

全編ワンカット風で撮影された映画なので、戦争映画としても没入感があって面白く、特にラストの戦場を走り抜けるシーンは映画史に残る名シーンだと思います。

この作品は組織論の観点から読み解くと、「コミュニケーション」の重要性を示した映画だと感じました。組織論の祖ともいえるBarnardは組織が成立する条件として①組織目的②貢献意欲③コミュニケーション、をあげています(Barnard,1938)。軍隊とはまさに厳格な官僚制で統制された合理的な組織ですが、勝利という目標達成のためには、各種の「調整」が必要になってきます。今回の映画の例でいくと、「攻撃の中止」というのはまさに調整の一環ですね。この調整を実現するのがコミュニケーション、すなわち伝令なわけです。戦時下という不確実性の高い環境においてイギリス陸軍司令部は情報収集をして意思決定を、デヴォンシャー連隊第2大隊は実行を、という風に分業がなされています。その間を調整するのが伝令兵の仕事、ということです。

今でこそインターネットの発達によりコミュニケーションが飛躍的に効率的になりましたが、舞台となった第一次世界大戦中にそんなものはないわけですから、伝令兵の出番というわけですね。コミュニケーションがなされなければ、どんなに最適な意思決定がされていても無意味になってしまいます。

当たり前のことのように思えますが、実務に落とし込むと、どうコミュニケーションのフローを設計するのか?は不確実性が高まれば高まるほど、分業の程度が複雑になればなるほど重要になってきます。これは組織デザインの領域ですね。

組織デザイン (日経文庫)

組織デザイン (日経文庫)

  • 作者:沼上 幹
  • 発売日: 2004/06/01
  • メディア: 新書
 

 果たして主人公は伝令を無事に伝えて、攻撃の中止をさせることができるのか?それは是非映画を見ていただければと思います。