【読書メモ】「知ってるつもり 無知の科学」(著)スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック
2020年に最後に読んだ本はこちらでした。早稲田ビジネススクールの入山先生が「世界標準の経営理論」で紹介されていて興味を持ちました。知的好奇心をくすぐられる面白い本でした。本書で書かれてあることは組織論を学ぶ上でとても重要だと思うので、簡単にまとめます。
認知科学者2人によって書かれています。本書で明らかにされているのは人間の知性の限界にあります。
タイトルにある通り、世の中には知っていようで知らないことがたくさんあります。
本書で例示されていたのは、
・トイレの仕組み
・コーヒーメーカーの仕組み
・糊で紙がくっつく仕組み
・カメラの照準の仕組み
などなど。なんとなく知っているようだけど、いざ説明せよと言われれば難しいはずです。このように人間は自分が思っているよりも無知なのです。これを「知識の錯覚」と言います。
これは人間の思考プロセスが必要な情報だけを抽出し、それ以外をすべて除去するのに長けているからです。そして個別のモノや状況について詳細な情報を得るようにはできていないのです。
そうなった理由を著者らは思考の目的が「行動」にあるから、としています。人間は目的を達成するために必要なことを、より的確にできるようになるために進化した、ということです。そして、行動の有効性を高めるために必要な思考は「因果関係の推論」です。行動の効果を予測するには、原因がどんな結果をもたらすのかを推測する必要があります。その思考に詳細な知識は必要ないのです。どのような仕組みで動くのか、そのおおもとにある規則性だけを理解しておけばよい、という風に進化したのです。
ではそのような不完全性を持った人間がどうしてここまで発展することができたのか?それは私たちが知識のコミュニティで生きているからです。困ったときにはインターネットで調べたり、自分より詳しい知人や親族、専門業者に依頼をすることで問題を解決することができます。このコミュニティのおかげで人間は自分たちの限界を超越し発展することができたのです。チームや組織が存在する意義と言ってもいいでしょう。
以上はほんのエッセンスで、本書にはこのような人間の認知についての理解を深めることができます。これらの知識を抑えておくだけでも組織論に対する解像度がぐっと変わってくると思います。